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舞踏/室伏鴻 Ko & Edge「Heels」

交互に滲ませる緊張と弛緩

石井達朗

舞踏のベテラン室伏鴻は、長らく海外で活動していたが、衝撃的なソロ作品「Edge」(00年)の公演以来、改めて注目されている。その室伏が3人の若さみなぎる男たち(目黒大路、鈴木ユキオ、林貞之)に振り付け、自らも踊る小公演「Heels」があった(東京、神楽坂のdie pratze、14日)。

3人の男が、それぞれ畳み一畳大の真鍮板を使いながら動く。これが大きくて重いものだから途中でふらついたり、計算できない動きがズレを生じて面白い。しなる真鍮板がバリバリと音をたてたり光が乱反射するのも、不確定な効果を生んでいる。中盤、1つ1つの行為をゆっくりと確認するような室伏のソロが、テンションを高める。うずくまると鍛えられた広背筋と僧帽筋が1つになり、背中が球体のようにふくらむ。その異様な後ろ姿に、すっかり眼が釘付けになる。なにしろ「ヒト」から「モノ」へと限りなく変貌してゆく感じなのだ。

終盤はがらりと変わって、ノイズ音が響くなか、室伏を含めた真っ黒なスーツの4人の男が、そろって顔を布で覆って登場。3人の男は、オブジェとして体を張る迫力があるし、魅力的な体格なのだが、もっと心身のコントロールが必要だ。また、真鍮板は身体をエッジに立たせるそれなりの効果があるにしても、3人の男が履いているハイヒールにはそれが希薄である。男のハイヒールという道具立ては、一見意表をつくようで月並みではないだろうか。

いわゆる「踊り」も「演技」も全面的に消去し、緊張と弛緩を交互に体に滲ませながら、今ここにある掛け値なしの身体のプレゼンスを開示する室伏鴻は、無二の領域を築いている。舞踏の始祖・土方巽を触媒にして、その模倣でなく自分の身体と表現に真っ向から対峙しているといえるだろう。

April 24, 2004
『朝日新聞』夕刊

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2004