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常闇形

1977

生まれながらにして異形であることの宿命に巣食う、
存在の全的充足とはどのようにしてやってくるのかという問いの渦中で
思考の持続を暴力的に中断する、

切断の断面に立つ、
重層する闇から血が滴りおち命が湧出する
それを見たい、所有したい、
かしいだ命、きれぎれの吐息、傾いた船、
片翼の飛行、溺死の予兆であり墜落の予兆、
もののかたちがくずれおれ、隠されたものが露になる。

存在の際、縁、隅、鄙へ、常闇へ
死臭が、より生を際立たせるだろう、
必死で際立つもの、
断面に動かしがたい必然として残酷、滑稽に灼き付いた痙攣が舞踏の祖である。
命の祖形がある。

すべての裂傷の、危機の、中心にあって私は、一個の破局である。
危機一身となり、もはやどこの世界へ連行されるかを知らぬ 当の私が
世界を連行している魔の巣窟である。
私は私自身の薬師でなければならない。

撲殺体
私の存在を全体として奪いとるものでありたい。未知への切迫は、限度を超えるエロス、恋だ。
私は神であるのを止め、測量不能なものに私を同一化して狂気の王となる。
私の存在を、非在をめいっぱいに充満するものは不安やおそれではない。
それらがいつもそこから打ち寄せてくる私の存在の海、ひなの地、
私の中心にある原初の海の混沌。
現実の海の前で私は震える橋である。

私は脱出したまま宙吊りになった肉体である。
嗜虐的なまでに痛覚を呼ぶ肉体が、この国の常闇に血統している。
緊張と痙攣と破砕への切迫、そして絶対的静寂への……。
忍耐をこえる痛み、陶酔は、私を喪失させる。
無我の、呆気の境にあるのもまた、舞踏の祖である。

私は私を舞踏場に殺害する。
が私は不死であり甦えるものだ。
私をひとつの全体として死なしめ、再び、ひとつの全体として生かすものの力が、
常闇から風を捲き風を切って露らわになるとき、常闇形は醒めた鋼として収穫される。

March 1, 1977
室伏鴻
for 《常闇形》

Description

舞踏派背火第2回公演。以後、背火の本公演はすべて、本作・常闇形のタイトルを冠詞として催される。山岳信仰や折口信夫の仕事に強い関心を示していた室伏の思考の具現化である“木乃伊”は、本公演においてさらに成熟していく。
(Y.O)

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常闇形1977