死のうとして踊りをはじめた

1979

from Memo

死のうとして 踊りをはじめた。

さて今日は虎に会う日だ。
喰われても仕方があるまい。交接しても良い。差し互えてもよい。
喰いちぎられた肉の破片をぶらさげて、虚空に躍りあがってやろうではないか。

投身のとき、身投げと同時に僕は別のかたちを掴むのだ。
分身が別の分身を産み出すようにして生きるほかない。
死ぬ身からは、不様ともいいようのない多様な分身たちが、身躍らせて飛散する。

どこにもかしこにも、もはや誰彼の境目もつかぬ、はるか遠い未知の記憶をひっ掴んで、
どこにもいなくなるようにして偏在する、乱流する。

僕らという 限りのある過程は
      限りのある はかない命は
限りない方法を 生きられるか。

1979
室伏鴻