2014
2014 受賞のご挨拶に代えて、
この度は、舞踊批評家協会賞の授賞、心から御礼申し上げます。あいにく南米ツアーに重なり、授賞式を欠席することになり残念至極です。慶応大学アートセンターの森下隆氏に代理出席をお願いしました。
南米は、コロンビアのカルタヘナ、カリブ海の風に吹かれながらこれを書いています。「カリブ舞台芸術祭」に参加して『リトルネロ』を踊っています。
数えてみるに、1969年、『肉体の氾濫』の翌年に土方巽のアスベスト館へ上がりこみ踊り始めて以来、45年の歳月が流れました。デビューは、静岡県の浜松『金馬車ミュージック』というストリップ小屋でしたが、兄弟子の玉野黄市氏に助けられながら、ニジンスキーのタイツを付け、「牧神の午後」のポーズを頼りに踊ったのをいまでも鮮明に思い出すことが出来ます。その後、麿赤兒との「大駱駝艦」、自身で主宰した「舞踏派・背火」、「激しい季節」、女性舞踏団「アリアドーネの会」のプロデュースと振付、そして1978年にパリで初めて行った舞踏公演『最期の楽園』と駆け抜けるようにして70年代は過ぎ、80年代はパリへ移住してヨーロッパを漂泊する<旅鴉>のようにして過ぎました。
拠点を持たず移動しつづけること、いつでも<外>にあること、速度と超・速度、瞬間と永遠について、身体と<力の結晶化>について思いを巡らせながら生きて来て、昨年は『<外>の千夜一夜』とタイトルしたイヴェントを6日間、横浜・赤レンガ倉庫の協賛を得て開催することが出来ました。
<舞踏の新境地を果敢に展開した>との評価は、わたし個人のものではなく、ひとえにジャンルを越えて参画くださった方々の複数の力の結集に与えられたものです。深く感謝します。そして、更なる身体の零度、零度の身体に向けて精進しつづけることをここにお約束して受賞の言葉に代えさせていただきます。
2014年4月 室伏鴻