1984
室伏の稽古場が大田区山王、中西夏之の自宅が大田区馬込、ともに京浜東北線大森駅山王北口エリアということで、二人はよく会い、ときに一献を傾けと、そのつきあいは長く、深い。本公演の会場は、同じ大森にあったアリアドーネの稽古場、山王に稽古場があった頃──海外にいる時間のほうが多くなった室伏、カルロッタ池田にとって維持する必要はなく、80年代初頭に賃貸契約を打ち切った──はアリアドーネの寮だった場所。本公演には室伏と中西を結びつけた土方巽も顔を見せ、公演後の打ち上げには久々に旧知の面々が集い、気を吐いていた。そんな懐かしい顔ぶれに混じって、詩人・フランス文学者、というより今は作家の松浦寿輝、画家・美術評論の松浦寿夫といった新たな才知の顔も。室伏は年少の彼らとのつきあいからも多くを学んでゆく。中西の初期作品とは1959年から60年にかけて制作された《韻》の連作。
(Y.O)