2003
(どんなふうに鍛えているかを問われ)……うーん、私はいい加減ですよ。毎朝トレーニングしてから人に会いに行くという勤勉さからは外れております(笑)。“特異”と言えば、どの身体もすべて“特異”だから。だから、猫背を矯正する方向にはいかない。猫背のまんまやろうじゃないの。ケモノの品位というか、雑草の持つエレガンスというか、動物性に対するこだわりがあります。ある種本能的な速度と強度。人間は、動物でもあり植物でもあり、そして鉱物でもある。二足歩行だけでなく片足で四足で、盲目で、猫や犬とも花や石とも交通し、混成する、むしろそうして錯乱する、そういう“野蛮で繊細な”時間に対するこだわりがある。呼吸の話をしましたが、普通に息をしているだけではすまない危ういときがあります。「ヒャッ」とシャックリしたり、寝言を呟きながら不意に窒息する。実際に四足歩行をしてみることで、立ってカウントをとってリズムに乗って動いていくようなことではなく、そこから外れてしまった“外”の時間へと向かわせる。生成する生なのか回帰する生なのか、その感覚をからだの資本として、鍛える必要はないけれど、反復していく必要はあると思っています。
室伏鴻 石井達朗氏によるインタビューより