サミュエル・ベケット『モロイ』新訳─朗読会
ベケットの小説三部作と呼ばれる『モロイ』、『マロウン死す』、『名づけられないもの』の新訳を手がけることになり、現在は訳文を推敲しているところです。ベケットの演劇はこの三部作の言語空間から登場するとも言えましょう。しかしこれらの作品の語る声は、舞台に響く声ではなく、ベケットの肉声でもなく、どの次元にあるのか特定するのが難しい。それを訳すことは、声を探しあてる仕事でもあります。室伏鴻の声の漂う場所で、訳してきた文章を朗読しながら、なお声を探す作業を続けます。お付き合いいただけると幸いです。
(なお訳書は河出書房新社より来年刊行予定です) 宇野邦一