虚飾を排し、自身の身体を「さらし者」になるまで空間に差し出した室伏は、晩年、孤絶の域に達していた。これは最早、他の者に伝授することなど不可能。誰にも教えられない、誰も学べない。それは「模倣」からもっとも遠い、名付け得ぬ領域であった。──石井達朗
Director's Message
室伏鴻アーカイブは発足以来、舞踏家・室伏鴻の残した資料を整理しつつ、研究を中心に活動を展開してきました。 その中で、私たちは、室伏自身が踊りを通して問い続けてきたことに向き合うことになります。
ダンサーのアーカイブであるにも関わらず、私たちが、なぜ、研究を優先してきたのか。
それは、多くのダンサーがたどる〈かたち〉の模倣から距離を取り、ダンスにおける〈継承〉とはなにか、ということをまず明らかにしたいと考えたからです。 ほとんどのダンサーたちは、もしくは全てのダンサーは、ダンスの投げかける〈問い〉自体に目を向けることなく、まず〈かたち〉を真似ようとします。
私たちは、〈問い〉に気づくこともなく行われる安易なかたちの模倣が、継承の方法として受け入れられ支持されていくことによって、〈問い〉としての身体が見失われていくことを危惧しています。
室伏鴻アーカイブとして私たちがなすべきことがあるとすれば、〈かたち〉の模倣=「ダンスの継承」という安易な流れに追随することなく、室伏の〈問い〉を検証し、さらに問い続けていくことだと考えています。
今回のプロジェクトは、室伏鴻の友人であり良き理解者でもあったエマニュエル・ユインやベルナルド・モンテ、室伏の死により完成を見なかった振付作品《真夜中のニジンスキー》に出演を予定していた若手ダンサーたちなど、室伏について未だその意味を問い続けるダンサー計11人によって展開されます。
彼らが室伏の〈問い〉をどのように受け取り、どのように〈応答〉するのか。また、彼らの〈応答〉は私たちにどのような視座をもたらすのか。
ダンサーとの共同作業は、室伏鴻アーカイブにとっては初めての挑戦です。
予想通りの〈応答〉がもたらされるとはかぎりません。
挑戦してみること、ジャンプしてみること自体が、このアーカイブから室伏への〈応答〉なのかもしれません。
Butohと名づけられたものそれは死んだのだ。
そうして 新らたに立ち上がる力には未だ名はない。
名のない 未知の力のあらわれに人は心を奪われる。
驚き=事件が到来する。
到来するのは 未だ名のない
N.N.の力のmeeting と sessionである。
──室伏鴻
開催概要
主催
一般社団法人Ko&Edge (室伏鴻アーカイブ)
助成
アーツカウンシル東京 (公益財団法人東京都歴史文化財団)
Acción Cultural
協力
公益財団法人セゾン文化財団
アンスティチュ・フランセ東京
北千住BUoY
後援
株式会社河出書房新社
ギリシャ大使館
スペイン大使館
ノルェー大使館
ポルトガル大使館
カモンイス国際言語協力機構
協賛
ヒグラシ文庫
SE-BI オフィス(有)
(株)イースト・クルー
(株)ライフリング
クレジット
ディレクター
渡辺喜美子
Web
中村泰之
チラシデザイン
纐纈友洋
編集協力
中村麗
清末浩平
翻訳
ヲツン・フランシス
ヴィンシー・ティン
カティア・チェントンツェ
テクニカル・アドバイザー
伊藤孝(ARTCOR)
スペシャル・サンクス
稲生幸成
足立政司
加藤俊明
ヒッチコック研究会