1998
ブラジルで膝を怪我して、手術よりも自然治癒がいいというので、カミさん(註:草薙うらら)も疲れていたし、ツアーも切って帰国しました。全治8か月くらいだったかな。それで中断した時期があって、タクシーの運ちゃんをやったんだ(笑)。96、97年くらいじゃない? そうしたら、土方さんの13回忌に掛けて『土方巽’98』という催しがあって、森下(隆)さんが私のところに声を掛けてきた。で、土方さんはバタイユ、アルトーとも関わりが深いのではないかと、フランス哲学の宇野邦一さんと西谷修さんをシンポジウムに呼んで、私がそこでパフォーマンスする企画をやった。その最後に、全体的に舞踏について話すシンポジウムがあって、舞踏について話している人ばかりで集まってもつまらないから、鴻英良と桜井圭介を呼びました。鴻さんは私の公演を見ていたし、桜井さんは『西麻布ダンス教室』を出したばかりだった。そのとき、桜井さんに、室伏さん踊ってくださいよ、と呼ばれたのです。同時に世田谷パブリックシアターにも呼ばれた。きっかけは森下さんと桜井さんが作ったんですよ。
室伏・談
本公演では、『慈悲心鳥がバサバサと骨の羽を拡げてくる』(註:詩人・吉増剛造が土方の独白からタイトルづけ。当初は土方の葬儀の香典返しとして関係者に配られたLPレコードで、のちにCD化。書き起こしによる書物もあり)に収録された土方の肉声をバックに室伏が踊り、亡き師に最大級の敬意を捧げた。
(Y.O)