1984
背火に替わる新たな組織体として構想されていたのが“室伏鴻〈劇場〉”。混成をバネに、先へ先へと進んでゆくことを身上とした室伏だったが、一方で、それまでの、生活を共にする形での集団に対して拒否の意志をあらわにするようになっていく。集団を維持する際にしばしば生じる馴れ合い、結託、癒着。結果、風通しが悪くなり、腐っていくことへの苛立ち。大駱駝艦時代の仲間で、大須賀勇氏と白虎舎を立ち上げた蛭田早苗氏によると、駱駝時代の室伏は、渡された知恵の輪に、最初は殊勝に取り組んでみせるものの、「すぐさま力任せに引きちぎっちゃうの」と。そんな野蛮さの背後に、恐るべき繊細さを隠しもっていた人は、各々が別の圏域で棲息し、公演ともなれば身ひとつでパッと集まってくるような、揮発度が高い組織をこそ望んでいた。“室伏鴻〈劇場〉”は、その夢の初めの一歩。
(Y.O)